犠牲者の手記を最後まで読んではいけない
犠牲者の手記 ●○○○○
ぼくは今日 ともだちをたべた
お腹が空いたんだから仕方がない
こうなった以上は
どちらかでもいきのびて
ぼくらの帰りを待つ人たちに
報告をしたほうがいい
僕らはジャンケンで、負けた方が
相手を食べることにきめた
僕はまけてしまった
血でのどの渇きを潤わせる
肉で命をながらえる
この血も肉もさっきまで話してた
あいつの命を繋いでいた
中身なんだと思ったら
どうしようもなく涙がとまらない
死んでも一緒にいたいから俺は
あいつの目玉を持ってゆく事にした
正気を保っていられるように、
ぼくは出来るだけ手記を残そうと思う
犠牲者の手記を最後まで読んではいけない
犠牲者の手記 ●●○○○
俺のてのひらに
生きていたあいつの、
生きていた
あいつカラダの一部分握られている
アイツの頭についてた
器官を
持ち歩いているんだね
眼球ってこんなに
重かったんだ
僕は
その硬質感を確かめるように、
何度もにぎったり弱めたりしたのである
犠牲者の手記を最後まで読んではいけない
犠牲者の手記 ●●●○○
……アイツと一緒に脱出する為、
この校舎を探索しているが……
駄目だ。
もがけばもがくほど、
酷い事ばかり起こる……
耐え難い喉の渇きと
胃が縮んで潰れてしまいそうな
この空腹は
一刻ごとに膨れ上がり、
俺の前に黒く重くのしかかってくる……
手のひらの、
アイツの眼球と
話をする事で
俺は正気を保っている
そんなに俺を見るなよ
オマエの遺書は、
脱出したら必ず家族にとどけてやるから
犠牲者の手記を最後まで読んではいけない
犠牲者の手記 ●●●●○
……しゅきを
のこすぼくの
てはちに
まみれている
きがする
でもそれはおれのもうそ
おまえたち
がぼくをおそうから
おなかが
またすいてきた
こんな事ではいけない。
気をしっかりと
持たなくては、
アイツに申し訳が立たない。
血塗れの手で
俺は、
握りつぶした物を
そっと飲み込んだ
犠牲者の手記を最後まで読んではいけない
犠牲者の手記 ●●●●●
……これを読んでいる人がいれば
……忠告しておこう
……救いなど来ない
……何も与えられはしない
……無限に続く無為
永久に続く拷問
……ここの正体はそんな所だ
……空腹と渇きが押さえられ
なくなった俺は
……またアイツの
遺体にむしゃぶりついた
……舌の感覚などとっくに無い
……ただ肉と水分を
胃に詰め込んでいるだけ
……二度とお前の
体を刻まないと
誓ったのに
…許してくれ
…許してくれよな